特定技能制度は、日本での労働力不足を緩和することを目的とした新しい在留資格制度です。
この制度は2019年4月に導入され、日本の労働市場における外国人労働者の受け入れを拡大することを目指しています。
2023年度中には技能実習制度、そしてこの特定技能制度が大きな改正となるようです。より人材確保のための制度として日本中に浸透することを願うばかりです。
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【特定技能制度の歴史】
特定技能制度は、日本の労働力不足に対処するために導入されました。高齢化社会や少子化により、労働力が減少し、特に介護、建設、農業などの分野で人手不足が深刻化しています。
これに対処するため、日本政府は特定技能制度を導入し、特定の産業分野で働く外国人労働者の受け入れを拡大することを決定しました。
特定技能制度には、特定技能1号と特定技能2号の2つのカテゴリーがあります。
特定技能外国人の受け入れと業務区分
特定技能1号は、12分野(14業種)で働く外国人労働者を対象としています。これらの産業分野は以下の通りです。
「介護」「ビルクリーニング」「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」「建設」「造船・船用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」
が特定技能1号になります。
特定技能(1号)の要件
日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上の日本語能力(基本的な日本語が理解できるレベル)を証明する。ただし、介護分野においては、介護日本語評価試験(CJAT)に合格することが求められます。
対象となる産業分野における技能試験に合格する。各分野ごとに独自の技能試験が設定されており、これに合格することが必要です。
特定技能1号の滞在期間は、最長5年までとなっており、家族と一緒に滞在する権利はありません。また、特定技能1号は、就労範囲が限定されており、原則として転職はできません。
この転職できません、という部分も変わりそうですね。
これらの要件を満たした上で、日本の受け入れ企業との雇用契約を結び、在留資格認定証明書の申請を行い、特定技能ビザの申請をすることで、特定技能1号として日本で働くことができます。
ちなみに、特定技能2号は「建設」「船舶」の2分野しかない状態です。これも今回の改正で11分野に増えるとのことです。
特定技能制度の問題点を企業側の視点から具体的に解説
特定技能制度には、企業側から見たいくつかの問題点が指摘されています。具体的には以下のような点が挙げられます。
- 言語の壁:
外国人労働者が日本語を十分に理解できない場合、コミュニケーションが難しくなり、業務効率やチームワークに影響が出る可能性があります。また、安全面でも問題が生じることが懸念されています。 - 異文化への適応:
異なる文化背景を持つ外国人労働者が、日本の職場環境や社会慣習に慣れるまでには時間がかかることがあります。企業側も異文化理解や受け入れ態勢の整備に取り組む必要があります。 - 採用コスト:
特定技能制度を利用して外国人労働者を採用する際には、通訳・翻訳コストや技能試験の受験費用、適切な住居の手配など、追加的なコストが発生することがあります。 - 労働者の定着率:
特定技能1号の滞在期間は最長5年までであり、家族と一緒に滞在する権利がないため、外国人労働者が長期的に定着しにくい状況が生じる可能性があります。これにより、企業側は継続的な人材確保が難しくなるかもしれません。 - 労働環境の整備:
外国人労働者が働く環境を整備するために、企業側は適切な労働条件やサポート体制を提供する必要があります。例えば、外国人労働者向けの研修や日本語教育の充実が求められます。 - 法令順守:
外国人労働者の受け入れに関する法令や規定に対する理解が不十分な企業が一部存在し、適切な労働条件の提供や在留手続きのサポートが不十分な場合があります。
外国人労働者に対するサポート体制の整備
外国人労働者に対するサポート体制の整備や労働環境の改善に努める必要があり、具体的には以下のような取り組みをすると良いと思います。
- 事前研修やオリエンテーションの実施:
外国人労働者が日本の職場環境や文化に慣れるために、事前研修やオリエンテーションを実施し、日本の社会慣習や企業文化について理解を深めさせることが有効です。 - 日本語教育の提供:
外国人労働者が円滑なコミュニケーションができるよう、日本語教育や現地での言語サポートを提供することが重要です。 - メンター制度の導入:
日本人社員が外国人労働者のメンターとなり、業務や生活に関するサポートを行うことで、外国人労働者の適応を促進し、職場での円滑なコミュニケーションを支援できます。 - 福利厚生の充実:
外国人労働者に対しても、適切な労働条件や福利厚生を提供し、長期的に働く環境を整えることが求められます。 - 外国人労働者の意見や要望の受け入れ:
企業側は、外国人労働者の意見や要望を積極的に受け入れ、労働環境の改善に努めることが重要です。
これらの取り組みを通じて、企業側は特定技能制度の問題点に対処し、外国人労働者と共に働く環境を整備することができます。
外国人労働者が働きやすい職場を作ることで、企業側も労働力不足の解消や業務効率の向上に繋がることが期待されます。
しかし、企業側の負担というものもかなり大きいのが現実とされています。今後の改正と共に企業側と外国人労働者側、双方がゆとりを持ってお互いwinwinの関係をもっと構築できる世の中を望みます。
外国人の技能実習制度と今後の展開
技能実習制度とは、日本政府が主導する外国人労働者の研修制度で、発展途上国の若者たちに日本の企業で技術や知識を習得させ、母国の経済発展に役立てることを目的としています。
この制度は1993年に導入され、多くの外国人労働者が日本で働く機会を得ています。
すなわち、日本で学んだ技術を母国に持ち帰って広めよう!ということですね。
技能実習制度は以下のような特徴があります。
研修期間:
技能実習制度は、技能実習1号(最長1年)、技能実習2号(最長2年)、技能実習3号(最長2年)の3つのステップがあり、最長で5年間働くことができます。
研修分野:
技能実習生は、主に製造業、建設業、農業、漁業、介護などの分野で働きます。これらの分野で日本の技術や知識を習得し、母国での雇用や起業に活かすことが期待されています。
賃金・労働条件:
技能実習生は、日本の労働法に基づく賃金や労働条件が適用されます。また、労働基準法や労働安全衛生法などの法令に則って、労働環境や労働時間が整備されることが求められます。
日本語教育:
技能実習生は、日本で働くために必要な日本語能力を身につけることが求められます。そのため、企業や研修機関は日本語教育や技術研修を実施し、技能実習生の日本語能力向上をサポートします。
帰国後の支援:
技能実習生が母国に帰国した後も、習得した技術や知識を活かして雇用や起業ができるよう、帰国後の支援が行われます。例えば、日本の企業と連携した技術移転やビジネスマッチングなどが行われることがあります。
技能実習制度を通じて、外国人労働者は日本の技術や知識を習得し、母国の経済発展に貢献することが期待されています。
技能実習制度の問題点
しかし、技能実習制度には問題点も指摘されており、労働環境の悪化や過労、賃金未払いなどの問題が報告されているのが現実です。
このため日本政府や関係機関は、技能実習制度の運営や監督を強化し、技能実習生の人権保護や労働環境の改善に取り組んでいます。
例えば、技能実習監理組合の設立や、技能実習生の受け入れ企業の適正化を図るための指導・監督が行われています。
また、技能実習生が日本での就労経験を活かして、より高度な技術や知識を身につけることができるよう、2019年から特定技能制度が導入されています。
技能実習制度と特定技能制度を通じて、日本は国際的な人材交流を促進し、外国人労働者が日本で働く機会を提供しながら、母国の経済発展にも貢献しています。
今後の特定技能制度と同じくして、現状の技能実習制度は実質廃止、という報道も出ています。(令和5年4月現在)
新たな制度では人材育成だけではなく、働く人材の確保を主な目的に掲げ、これまで原則できなかった「転籍」と呼ばれる働く企業の変更も、従来に比べて緩和し、一定程度認めるとしています。
「持ち帰って母国で広めてね」から、「日本の労働不足解消のためにこのままここで働いて」とかわるかもしれません。
特定技能外国人をサポートする登録支援機関とは
登録支援機関とは、外国人労働者と日本の企業をつなぐ、特定技能制度における重要な役割を担っている機関です。
登録支援機関がどのように外国人労働者と企業をサポートし、特定技能制度の円滑な運用に貢献しているのかについて解説します。
・外国人労働者のサポート:
登録支援機関は、特定技能1号の外国人労働者に対して、日本での生活や就労に必要な情報提供や相談窓口を提供します。
また、外国人労働者が日本で働くための手続きや、住居の確保、日本語教育などのサポートも行っています。
・企業のサポート:
登録支援機関は、特定技能制度を活用して外国人労働者を雇用したい企業に対して、適切な労働者の紹介や雇用契約の締結に関するアドバイスを提供します。
また、企業が外国人労働者と円滑にコミュニケーションを取れるよう、文化や言語の違いに配慮したサポートも行っています。
・特定技能制度の運用サポート:
登録支援機関は、特定技能制度の運用に関する情報収集や相談対応を行い、外国人労働者と企業がスムーズに協力できる環境を整備しています。
さらに、特定技能制度の改善点や問題点を政府に報告し、制度の改善に向けて提言を行うことも役割の一つです。
登録支援機関は、特定技能制度の円滑な運用と外国人労働者と企業の成功をサポートするため、重要な役割を担っています。
これにより、外国人労働者と企業がお互いに利益を享受できる関係を築くことが可能となり、日本の労働市場において国際的な人材交流がより活発になることが期待されています。
登録支援機関になるための要件と将来展望
・登録支援機関の将来展望:
コロナも落着き、今後も日本の労働市場は国際化が進み、外国人労働者の受け入れが増加することが予想されます。
このような状況下で、登録支援機関は、特定技能制度の運用を円滑に進めるために、さらに重要な役割を担うことになるでしょう。
登録支援機関が提供するサービスの質や対応力が向上することで、外国人労働者と企業の双方にとって有益な環境が実現されることが期待されます。
登録支援機関は、外国人労働者と日本の企業を結びつける特定技能制度において、中心的な役割を果たしています。その活動を通じて、日本の労働市場が国際化し、外国人労働者と企業がお互いに利益を享受できる関係を築くことができるよう、引き続きサポートが期待されています。
企業が登録支援機関になるためには、法務省による登録手続きを行い、一定の要件を満たさなければなりません。(登録支援機関の審査に係る期間は約二か月)
- 登録申請書の提出
まず、企業は法務省に登録支援機関になるための登録申請書を提出する必要があり、登録申請書には、企業の概要や業務内容、代表者の情報などが記載されます。
- 要件の満たし
- 企業の代表者や役員が、法令に違反しないように業務を遂行する能力と信用を有していること。
- 企業が、外国人労働者の受け入れや支援に関する適切な知識と経験を持っていること。
- 企業が、外国人労働者の生活や就労に関する相談や支援が適切に行われる体制を整備していること。
- 法務省による審査
法務省は、登録申請書の提出と要件の確認を行った後、企業が登録支援機関として適切であるかどうかを審査します。審査の結果、企業が登録支援機関として適切であると判断された場合、法務省から登録証明書が交付されます。
登録支援機関として登録された企業は、特定技能1号の外国人労働者と受け入れ企業をサポートする業務を開始できます。
ただし、法務省は登録支援機関の運用状況について定期的に監査を行い、適切なサポートが提供されているかどうかを確認します。不適切な運用があった場合、登録の取り消しや行政処分が行われることがあるので注意が必要です。
登録支援機関としての運用上の注意
登録支援機関として活動を開始した後も、適切なサービスの提供や法令の遵守が求められます。以下に、登録支援機関としての運用上の注意点をいくつか挙げます。
●適切な情報提供と相談対応
登録支援機関は、外国人労働者と受け入れ企業に対して、適切な情報提供と相談対応を行うことが求められます。特定技能制度に関する最新の情報や手続きの方法、労働条件など、正確で役立つ情報を提供することが重要であると考えます。
●外国人労働者のサポート
登録支援機関は、外国人労働者の日本での生活や就労をサポートする役割も担っています。住居の確保や日本語教育、日本の文化や習慣についての指導など、外国人労働者が日本で働く上で必要なサポートを行うことが求められます。
●企業との連携
登録支援機関は、受け入れ企業と密接に連携し、外国人労働者の受け入れ環境の整備や労働条件の確認、労働者のフォローアップなどを行うことが重要です。
また、企業が外国人労働者と円滑にコミュニケーションを取れるように、言語や文化の違いに配慮したサポートも行います。
●改善提案と政策へのフィードバック
登録支援機関は、特定技能制度の運用に関する問題点や改善点を発見し、政府に報告する役割も担っています。政策改善に向けての提案や意見を積極的に行い、制度の運用がスムーズになるように働きかけていかなけばなりません。
登録支援機関として活動する上で、これらの点に注意し、外国人労働者と受け入れ企業の両方にとって有益なサービスを提供し続けることが重要です。
適切な運用が継続されることで、特定技能制度が円滑に機能し、国際化が進む労働市場において、外国人労働者と日本の企業が共に成長し、繁栄する環境が実現されることが期待されます。
まとめ
登録支援機関は、特定技能制度において外国人労働者と日本の企業をサポートする重要な役割を担っています。(空港の送迎、住居の確保や語学のサポート等)
企業が登録支援機関になるためには、法務省による登録手続きを行い、一定の要件を満たさなければなりません。登録された支援機関は、適切な情報提供、外国人労働者のサポート、企業との連携、改善提案などを行い、特定技能制度の円滑な運用に貢献していくことが必須です。
登録支援機関が適切なサービスを提供し続けることで、外国人労働者と受け入れ企業がお互いに利益を享受できる関係が築かれ、国際化が進む労働市場での成功が期待されます。
これからも登録支援機関の活動が、特定技能制度の発展と日本の労働市場の国際化に大きく貢献することが期待してやみません。